定着率を上げる方法|中小企業がやるべき施策と順番

大事なのは「何を、どの順番でやるか」

定着率を上げる施策は数多くありますが、やみくもに手を出しても効果は出ません。鍵は効果と着手しやすさで優先順位をつけ、正しい順番で取り組むこと。中小企業が今日から始められる施策を、順序立てて解説します。

「定着率を上げたい」と思っても、福利厚生の充実、給与改定、研修制度、社内イベント……と打ち手の候補は山ほどあり、何から手をつければいいか迷うものです。限られた時間とお金の中で成果を出すには、施策を「効果」と「着手しやすさ」で整理し、正しい順番で進めることが欠かせません。この記事では、中小企業が定着率を上げるためにやるべき施策を、優先順位と具体的な手順に落とし込んで解説します。

定着率向上は「効果×着手しやすさ」で考える

定着率向上の施策を効果と着手しやすさで整理するイメージ

定着率の施策は、大きく2つの軸で評価できます。一つは「定着への効果の大きさ」、もう一つは「中小企業でも着手しやすいか(コスト・手間)」です。この2軸でマッピングすると、優先すべき施策が見えてきます。

分類特徴進め方
効果大・着手しやすいお金をかけず効く施策最優先で今すぐ着手
効果大・着手しにくい制度・投資が必要計画的に中期で取り組む
効果小・着手しやすいイベント等余力があれば実施
効果小・着手しにくい費用対効果が低い後回しでよい

多くの会社が、いきなり「効果小・着手しにくい」施策(凝った福利厚生や大きな研修制度)に手を出して疲弊します。まずは「効果大・着手しやすい」施策から。それが定着率向上の鉄則です。

取り組むべき施策の順番

定着率向上の施策の順番を示したステップのイメージ

定着率向上には、効果が出やすい順番があります。下から積み上げるイメージで、次の5ステップで進めるのがおすすめです。

  • STEP1:オンボーディング(受け入れ)——入社直後の離脱を防ぐ
  • STEP2:評価・処遇——頑張りが報われる実感をつくる
  • STEP3:働きやすさ——心身の消耗を減らす
  • STEP4:キャリア・成長——この先の希望を見せる
  • STEP5:関係性・つながり——居場所だと感じてもらう

順番には意味があります。土台となる受け入れや処遇が不安定なまま、キャリア支援や関係づくりだけ頑張っても効果は薄い。下のステップから固めていくことで、施策が積み上がり、定着率は着実に改善します。

STEP1:オンボーディングで早期離脱を防ぐ

新入社員の受け入れ・オンボーディングのイメージ

離職がもっとも起きやすいのは入社直後です。せっかく採用しても、最初の数週間〜数か月で「思っていたのと違う」「放置されている」と感じて辞めてしまう。ここを防ぐだけで、定着率は大きく変わります。

受け入れの段取りを決めておく

初日に誰が何を教えるか、最初の1か月で何を覚えてもらうかをあらかじめ決めておくだけで、新入社員の不安は激減します。「とりあえず現場で見て覚えて」は最悪です。簡単なマニュアルやチェックリストを用意し、教える側の負担も減らしましょう。

最初の1か月はこまめに声をかける

入社後しばらくは、上司や先輩が意識的に声をかけ、困っていることを早めに拾います。「何かあったら言って」では人は言いません。週に一度でも「最近どう?」と短い面談を持つだけで、小さな不満が辞職に育つ前に対処できます。早期離職を防ぐ仕組みは早期離職の理由ランキングと辞めさせない仕組みで詳しく解説しています。

STEP2:評価・処遇で「報われる実感」をつくる

公正な評価と処遇について話し合うイメージ

退職理由の上位には、必ず「評価・処遇への不満」が入ります。給与の絶対額もさることながら、「頑張りが正当に評価されていない」という納得感のなさが人を離れさせます。

評価の基準を明確にし、伝える

社長の感覚で給与や賞与が決まる状態だと、社員は「何を頑張れば報われるのか」が分かりません。完璧な人事制度でなくてよいので、「こういう行動・成果を評価する」という基準を言葉にして共有することが第一歩です。基準が見えるだけで、納得感は大きく変わります。

給与だけに頼らない処遇を考える

中小企業は給与水準で大企業と張り合うのは難しいもの。だからこそ、感謝を言葉で伝える、裁量を任せる、成果を全員の前で認めるといった「お金以外の報酬」が効きます。人は給与だけで会社を選ぶわけではありません。処遇改善には助成金・補助金が使えるケースもあるので、あわせて検討しましょう。

「評価制度を整えたいが、何から手をつければいいか分からない」——そんな声をよくいただきます。御社の規模に合った、無理なく運用できる評価・処遇の仕組みづくりをご支援します。

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STEP3:働きやすさで消耗を減らす

働きやすい職場環境づくりのイメージ

どれだけやりがいがあっても、長時間労働で心身がすり減れば人は辞めます。残業の常態化、有給が取れない、休日出勤が当たり前といった状態は、定着率を下げる最大級の要因です。

まず労働時間の実態をつかむ

「うちはそんなに残業していない」という社長の感覚と、現場の実態がずれていることはよくあります。まずは労働時間を正確に把握し、特定の人や部署に負担が偏っていないかを確認しましょう。残業が減らない構造的な原因と対策は残業が減らない原因と働き方改革の進め方で解説しています。

業務効率化で「そもそもの仕事量」を減らす

働きやすさは、根性論ではなく仕組みで実現します。手作業の自動化、属人化の解消、ムダな業務の廃止といった業務効率化・省人化を進めれば、一人あたりの負担そのものが減り、無理なく労働時間を圧縮できます。

STEP4:キャリア・成長で未来を見せる

「この会社にいても先がない」と感じると、たとえ今の待遇に不満がなくても人は離れていきます。特に若手や向上心のある社員ほど、成長実感と将来像を重視します。

大がかりな研修制度は不要です。少し背伸びした仕事を任せる、資格取得を後押しする、数年後にどんな姿になれるかを具体的に語る。こうした小さな積み重ねが「ここで成長できそうだ」という期待につながり、定着を支えます。1on1の場で、本人がどうなりたいかを聞く時間を持つだけでも効果があります。

STEP5:関係性・つながりで居場所をつくる

最後のステップは、人間関係と「居場所感」です。退職理由の上位に常に「人間関係」が入ることからも分かるとおり、職場の関係性は定着を大きく左右します。

とはいえ、無理に飲み会を増やす必要はありません。大切なのは日常の中で互いを認め合い、安心して発言できる空気です。社長や上司が一人ひとりに関心を持ち、感謝や承認を言葉にする。それだけで「自分はこの組織に必要とされている」という感覚が育ちます。これは土台づくり(STEP1〜4)が整って初めて効いてくる、仕上げの施策です。

施策を「続ける仕組み」をつくる

定着率向上で最も難しいのは、始めることより続けることです。最初は気合いで面談や声かけをしても、忙しくなると真っ先に止まります。続けるためには、仕組み化が欠かせません。

  • 定例化する:1on1や受け入れ面談を「毎月◯日」と予定に組み込む
  • 担当を決める:社長一人で抱えず、各リーダーに役割を分担する
  • 数字で振り返る:半年ごとに離職率を測り、施策の効果を確認する

定着率向上は一度やって終わりではなく、文化として根づかせるものです。小さく始め、数字で効果を確かめながら続けることで、人が辞めにくい組織は着実につくられていきます。

定着施策は「何を・どの順番で・どう続けるか」で成果が大きく変わります。御社の状況に合わせて、優先順位の設計から運用の仕組みづくりまで伴走します。人が続く組織づくり、一緒に進めませんか。

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