「うちの会社、人がよく辞める気がする」——そう感じても、感覚だけでは打ち手は決められません。まず必要なのは、自社の離職率を数字でつかむことです。離職率は計算自体はシンプルですが、分母の取り方や対象期間を少し変えるだけで印象が大きく変わります。本記事では、離職率の定義と計算方法を具体例で示しつつ、業界平均・目安の捉え方、そして「自社の数字をどう評価し、次に何をすべきか」までをわかりやすく解説します。
離職率とは何か
離職率とは、ある一定期間において、どれだけの従業員が会社を離れたかを示す割合です。一般には1年間を区切りとして「年間離職率」を見ることが多く、人材の定着度や職場環境の健全さを測る基本指標として使われます。離職率が高いほど人が辞めやすい組織、低いほど人が定着しやすい組織だと判断できます。
ただし、離職率は単独の数字だけを見ても意味を持ちません。業界・規模・職種、そして自社の過去推移と比べてはじめて評価できる相対的な指標です。同じ「離職率15%」でも、業界平均が10%なら高め、平均が25%なら低めと、解釈はまったく変わってきます。まずは正しく計算し、そのうえで比較するという順序が大切です。
離職率の計算方法(基本の式)
離職率の基本式はとてもシンプルです。
| 離職率(%) | = 一定期間の離職者数 ÷ 起点時点の在籍者数 × 100 |
|---|
多くの統計(厚生労働省の雇用動向調査など)では、「1月1日時点の在籍者数」を分母とし、その年の離職者数を分子として計算します。式で見ると当たり前のようですが、実務では「分母をいつの在籍数にするか」で数字がぶれるため、社内ルールを一つに統一しておくことが重要です。
具体例で計算してみる
年初(1月1日)に在籍していた社員が20名、その年の1年間で3名が退職したとします。この場合の離職率は次のとおりです。
| 離職者数 | 3名 |
|---|---|
| 起点の在籍者数 | 20名 |
| 離職率 | 3 ÷ 20 × 100 = 15.0% |
つまり、この会社の年間離職率は15%です。逆にいえば、85%の社員が1年間とどまった、ということでもあります。後述しますが、この「とどまった割合」が定着率です。
計算期間と分母の取り方に注意
離職率でつまずきやすいのが、計算期間と分母の決め方です。ここが揺れると、同じ会社でも数字が大きく変わってしまいます。
計算期間は「1年」を基本に
離職率は基本的に1年間で区切ります。会社の会計年度(例:4月〜翌3月)に合わせても、暦年(1月〜12月)に合わせても構いませんが、毎年同じ期間で測ることが鉄則です。期間が年によって変わると、推移の比較ができなくなります。月単位や四半期で見たい場合は「期間が短いぶん数字も小さく出る」点に注意しましょう。
分母に「期中入社者」を含めるかを決める
分母を「起点の在籍者数だけ」にするか、「期中に入社した人も含める」かで数字は変わります。たとえば年初20名・期中に10名採用し、そのうち2名が辞めた場合、分母を20名にするか30名にするかで離職率は異なります。一般的な統計に合わせるなら起点在籍者を分母にしますが、採用を活発に行っている会社は「期中入社者の早期離職」も別途追ったほうが実態をつかめます。
新卒・中途、雇用形態は分けて見る
全社一律の離職率だけでは、問題のありかが見えません。新卒と中途、正社員とパート・アルバイトを分けて計算すると、どの層で人が抜けているかが浮かび上がります。たとえば全社では10%でも、新卒だけ見ると30%という会社は珍しくありません。打ち手を絞り込むためにも、可能な範囲で分解して見ることをおすすめします。
離職率と定着率の関係
離職率の裏返しが定着率です。両者は「コインの表と裏」の関係にあります。
| 定着率(%) | = 100 − 離職率(%) |
|---|
先ほどの例(離職率15%)なら、定着率は85%です。どちらを使っても情報量は同じですが、社内に共有するときは「定着率」のほうが前向きに伝わりやすいという利点があります。「離職率15%」と言うより「定着率85%、これを90%に上げよう」と言うほうが、社員のモチベーションを下げずに目標を共有できます。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。定着率を実際に引き上げる具体策は、定着率を上げる方法で詳しく解説しています。
「自社の離職率を出してみたが、これが高いのか低いのか判断できない」——そんなときは、業界・規模を踏まえた客観的な評価が役立ちます。数字の読み解きから改善の優先順位づけまでご支援します。
無料で相談する業界別の平均・目安の捉え方
厚生労働省の雇用動向調査によると、産業全体の平均離職率は近年おおむね15%前後を一つの目安に推移しています(年によって変動します)。ただし、これはあくまで全体平均であり、業界によって水準は大きく異なります。一般的な傾向として、次のような差があります。
- 離職率が高めの業界:宿泊・飲食サービス業、生活関連サービス・娯楽業など。人の入れ替わりが構造的に多く、20%を超えることも珍しくありません。
- 離職率が低めの業界:製造業、金融・保険業、建設業など。専門性が高く長く勤める人が多いため、10%前後にとどまる傾向があります。
大切なのは、自社の業界平均と比べることです。飲食業で離職率18%なら平均的かやや低めですが、製造業で18%なら明らかに高い。同じ数字でも評価は正反対になります。業界平均は「合格ラインの目安」ではなく「自社を映す鏡」として使いましょう。
自社の数字をどう評価するか
離職率を出したら、次の3つの視点で評価します。
- 業界平均との比較:自社の業界・規模の平均より高いか低いか。高ければ改善の余地が大きいサインです。
- 過去推移との比較:去年より上がっているか下がっているか。たとえ平均より低くても、年々上昇しているなら警戒が必要です。
- 退職理由の中身:定年・寿退職など前向きな離職か、不満による離職か。同じ数字でも意味はまったく違います。
特に見落とされがちなのが3つ目です。離職率という「量」だけでなく、なぜ辞めたかという「質」まで見て初めて、本当の評価ができます。退職者にできるだけ率直な理由を聞く仕組み(退職面談など)を整えておくことが、数字を活かす前提になります。
離職率が高い場合の次の一手
計算の結果、自社の離職率が業界平均より高い、あるいは年々上がっているとわかったら、放置せず原因の特定に進みましょう。離職率が高い会社にはいくつかの共通パターンがあり、それを知るだけでも打ち手の見当がつきます。詳しくは離職率が高い会社の共通点と改善ステップで解説しています。特に入社1〜3年での退職が多い場合は、早期離職の理由と防ぎ方もあわせて確認してください。
離職率は、測って終わりではなく「測る→評価する→手を打つ→また測る」というサイクルで初めて意味を持ちます。まずは正しく計算し、自社の現在地を客観的に把握するところから始めましょう。
