「人がいないから受けられる仕事を断っている」「ベテランは高齢、若手は続かない」——多くの中小工務店が、受注ではなく施工する人手の不足に直面しています。建設業の人手不足は景気の波ではなく、就業者の高齢化と若手の入職減という構造的な問題です。さらに2024年4月からは時間外労働の上限規制が適用され、これまで残業でしのいでいた現場が「人を増やすか、工期や工程を変えるか」の判断を迫られています。本記事では、建設業特有の事情を踏まえ、中小工務店が今すぐ取れる打ち手を整理します。
建設業の人手不足はなぜ起きているのか
建設業の就業者数はピーク時から大きく減少し、しかも残った人材の高齢化が進んでいます。一般に建設業就業者の3割超が55歳以上、29歳以下は1割程度とされ、この10年で世代交代がほとんど進んでいません。原因は一つではなく、複数の要因が重なっています。
職人の高齢化と技能の断絶
長年現場を支えてきた職人が一斉に引退期を迎えています。問題は単に頭数が減ることではなく、型枠・鉄筋・左官といった技能が次世代に引き継がれないまま失われることです。教える側がいなくなれば、若手を採っても育てられないという悪循環に陥ります。
若手が建設業を選ばない理由
「きつい・危険・休めない」というイメージが依然として根強く、給与水準も他産業と比べて魅力的に映りにくいのが現実です。とくに週休2日が定着していないこと、現場ごとに勤務地が変わること、天候で収入が不安定になることが、若年層が敬遠する具体的な理由になっています。
2024年問題(時間外労働の上限規制)
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則年720時間など)が適用されました。これまで長時間労働で工期を吸収していた現場では、同じ仕事量を従来より少ない労働時間で回す必要が生じています。人を増やせない中小工務店にとっては、実質的に「もう一段の人手不足」が顕在化したと言えます。
職種別に見る不足の深刻度
ひとくちに建設業といっても、不足の深刻さは職種によって異なります。自社がどの職種で詰まっているかを把握することが、対策の第一歩です。
| 職種 | 不足の主因 | 有効になりやすい打ち手 |
|---|---|---|
| 型枠大工・鉄筋工 | 技能習得に時間がかかり、高齢化が著しい | 協力会社との関係強化・若手育成の前倒し |
| とび・土工 | 体力負担が大きく定着が難しい | 機械化・省力化機材の導入 |
| 施工管理・現場監督 | 業務量過多と書類作業の負担 | 施工管理アプリ・ICTでの省力化 |
| 設備・電気 | 有資格者の絶対数が不足 | 資格取得支援・処遇改善 |
とくに施工管理(現場監督)は、現場の掛け持ちと膨大な書類業務で疲弊しやすく、ここが倒れると複数の現場が同時に止まります。職人だけでなく、管理側の人手とツールも対策の対象に含めてください。
対策1:賃金と休日——「選ばれる会社」の最低条件
採用テクニックの前に、まず労働条件そのものを見直す必要があります。同じ地域・同じ職種で比べられたとき、賃金と休日が見劣りすれば、どれだけ求人を工夫しても応募は集まりません。
- 週休2日(4週8休)への移行:発注者側も週休2日を前提とした工期設定に動いており、休日確保は「コスト」ではなく採用・定着の投資と考える。
- 日給月給から月給制へ:天候による収入変動をなくすだけで、若手の定着率は大きく変わる。
- 適正な労務費の確保:見積り段階で労務費を圧縮しないこと。賃金を上げるには受注単価の適正化が前提になる。
休日を増やすと工期が延びるという懸念はもっともですが、後述するICT施工や工程管理の改善とセットで考えれば、休日確保と生産性は両立できます。
対策2:ICT施工・省人化で「少人数でも回る」現場へ
人を増やせないなら、一人あたりの生産性を上げるしかありません。国土交通省が推進するi-Constructionの流れもあり、中小工務店でも導入しやすい省人化技術が増えています。
- ドローン・3Dスキャナによる測量:従来数人がかりだった測量を大幅に省力化できる。
- ICT建機(マシンコントロール):丁張りや法面整形の人手を減らし、熟練度に依存しない施工が可能になる。
- 施工管理アプリ・電子黒板:写真整理・日報・図面共有を一元化し、現場監督の事務作業を削減する。
- プレカット・ユニット化:現場での加工を工場側に移すことで、現場の人工を減らす。
これらは初期投資が必要ですが、後述のIT導入補助金やものづくり補助金の対象になる場合があります。「人を採る費用」と「省人化に投じる費用」を天秤にかけて判断してください。業務効率化の全体像は業務効率化による人手不足対策でも解説しています。
「賃金を上げる原資がない」「どの省人化投資から手をつけるべきか分からない」——こうした判断は、自社だけで抱え込まず外部の視点を入れると整理が進みます。御社の規模・受注構造に合わせた打ち手をご提案します。
無料で相談する対策3:外国人材(特定技能・技能実習)の活用
建設分野は特定技能の対象であり、即戦力に近い外国人材を中長期で雇用できる制度が整っています。技能実習からの移行ルートもあり、すでに多くの工務店が活用しています。
- 特定技能1号・2号:建設は2号への移行が可能な分野で、長期的な戦力化が見込める。
- 受入れの注意点:建設業独自の受入れ計画の認定(JAC加入など)が必要で、手続きは他産業より煩雑。専門の登録支援機関と組むのが現実的。
- 定着の鍵:日本語・生活支援と、日本人職人との関係づくり。受け入れて終わりにしないこと。
外国人材は「安く使う」発想で導入すると必ず失敗します。技能を持つ仲間として育て、定着してもらう前提で受け入れることが、結果的にコストを下げます。
対策4:協力会社・職人ネットワークの維持
中小工務店にとって、自社の正社員だけでなく協力会社や一人親方とのネットワークが施工力の源泉です。ここが細ると、繁忙期に人が確保できなくなります。
- 支払いサイトの適正化・代金の遅延をなくすなど、協力会社が「優先してくれる元請」になる。
- 協力会社の若手育成も一緒に支援し、ネットワーク全体で世代交代を進める。
- 無理な工期・無理な単価を押し付けないことが、長期的な施工力の確保につながる。
対策5:採用と定着——入口と出口の両方をふさぐ
人手不足は「採れない」だけでなく「辞める」ことでも悪化します。採用と定着は両輪で考えてください。
- 採用チャネルの多様化:ハローワークや求人媒体だけでなく、Indeedや自社サイト、職業訓練校・工業高校との関係づくりを。
- 仕事の魅力の言語化:「自分の手で街に残るものをつくる」という建設業ならではのやりがいを、求人で具体的に伝える。
- 入職後のフォロー:最初の3カ月で辞めさせない教育体制・相談役(メンター)を置く。
- 資格取得支援:施工管理技士や各種技能講習の費用負担は、定着とスキルアップの両方に効く。
対策6:使える助成金・補助金につなげる
ここまでの打ち手の多くは、国の助成金・補助金で費用負担を軽減できます。たとえば週休2日や賃上げに取り組む際の人材確保等支援助成金、省人化機材導入時のものづくり補助金やIT導入補助金などが候補です。何にいくら使えるかは要件次第なので、投資を決める前に対象制度を確認してください。詳しくは人手不足対策に使える助成金・補助金でまとめています。
まとめ:建設業の人手不足は「条件×省人化×育成」で打ち返す
建設業の人手不足は、採用の工夫だけでは解決しません。労働条件(賃金・週休2日)の底上げで選ばれる会社になり、ICT施工と省人化で少人数でも回る現場をつくり、外国人材と若手育成で施工力を維持する——この3つを並行して進めることが現実的な解です。すべてを一度にやる必要はありません。自社のいちばん詰まっている職種・工程から、補助金も使いながら一歩ずつ進めてください。
建設業の人手不足は、賃金・休日・省人化投資・採用と、判断すべきことが多く絡み合います。ノルツ株式会社は中小企業の経営に伴走し、御社の状況に合った優先順位づけと実行をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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