人を採る、育てる、待遇を改善する——こうした取り組みには、国や自治体の助成金が使えるケースが数多くあります。融資と違って返済不要であり、要件を満たせば採用にかかったコストの一部を取り戻せます。それにもかかわらず、「手続きが面倒そう」「自社が対象か分からない」という理由で活用されないまま放置されているのが実情です。この記事では、中小企業の採用・育成に使える代表的な助成金の概要と使いどころ、対象の考え方、申請の流れ、注意点をわかりやすく整理します。打てる手の幅を広げるために、まずは全体像を押さえましょう。
そもそも助成金とは何か(補助金との違い)
採用に関わる制度には、大きく「助成金」と「補助金」があります。助成金は主に厚生労働省が所管し、雇用や人材育成に関するもので、要件を満たせば原則として受給できます。財源は雇用保険です。一方補助金は主に経済産業省や自治体が所管し、設備投資や事業展開を支援するもので、予算と件数に上限があり審査を通った事業者だけが採択されます。
採用や育成で活用しやすいのは、要件を満たせば受給しやすい助成金です。本記事では、採用・育成に直結する代表的な助成金を中心に紹介します。設備投資やIT導入など幅広い制度については助成金・補助金の活用もあわせてご覧ください。
採用・育成に使える代表的な助成金
まずは、中小企業が活用しやすい代表的な助成金を一覧で押さえましょう。それぞれ目的と使いどころが異なります。
| 助成金 | 主な目的・使いどころ |
|---|---|
| 特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者・障害者・就職困難者などを雇い入れたときに活用 |
| トライアル雇用助成金 | 経験不足などで就職が難しい人を試行雇用するときに活用 |
| 人材開発支援助成金 | 従業員に訓練・研修を実施し、スキルアップを図るときに活用 |
| キャリアアップ助成金 | 非正規社員を正社員化したり、処遇を改善したりするときに活用 |
特定求職者雇用開発助成金
高齢者、障害者、母子家庭の親など、就職が特に難しい人を継続して雇用する場合に活用できる助成金です。これらの層は意欲が高く長く働いてくれることも多く、人手不足の中小企業にとって有力な採用ターゲットになります。ハローワーク等の紹介を通じて雇い入れることが基本的な要件となります。
トライアル雇用助成金
職業経験の不足などで就職が難しい人を、一定期間「お試し」で雇用する際に活用できます。本採用の前に適性を見極められるため、採用のミスマッチを減らせるのが大きなメリットです。「経験はないが意欲のある人を、まず試してみたい」という場面に向いています。
人材開発支援助成金
採用した人材を育てるための訓練・研修にかかる費用や賃金の一部を支援する助成金です。採って終わりではなく、戦力化までを後押ししてくれます。未経験者を採用して育てる方針の会社や、社員のスキルアップに投資したい会社と相性が良い制度です。
キャリアアップ助成金
パート・契約社員などの非正規社員を正社員に転換したり、待遇を改善したりする取り組みを支援します。既存の非正規社員を戦力として定着させたい場合や、処遇改善で離職を防ぎたい場合に活用できます。採用だけでなく定着の観点からも有効な制度です。
「どの助成金が自社に使えるのか分からない」という方へ。採用計画と助成金の活用をセットで整理し、採用コストを抑える具体策をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
無料で相談する対象になるかどうかの考え方
「自社は対象になるのか」を考えるとき、共通して押さえておきたい観点があります。多くの雇用関係の助成金には、次のような前提条件があります。
- 雇用保険の適用事業所であること
- 労働関係の法令を守り、労働保険料をきちんと納めていること
- 計画段階での届け出など、定められた手順を踏むこと
- 過去に不正受給などがないこと
そのうえで、各助成金ごとに「どんな人を」「どのように雇用・育成するか」という個別の要件が定められています。重要なのは、多くの助成金は「採用・取り組みを始める前」の計画・手続きが要件になっている点です。後から申請しようとしても間に合わないことが多いため、採用や研修を検討する段階で、使える制度がないかを先に確認しておくことが肝心です。
申請の流れ(概要)
助成金によって細かな手順は異なりますが、雇用関係の助成金は概ね次のような流れで進みます。全体像をイメージしておきましょう。
- STEP1:制度を調べ、対象になるか確認する——採用・研修の計画前に行う
- STEP2:必要に応じて計画書を提出する——取り組み開始前の届け出が要件のことが多い
- STEP3:計画に沿って採用・雇用・研修を実施する
- STEP4:要件を満たしたら支給申請を行う——実施後、定められた期間内に申請
- STEP5:審査を経て支給される
このように、助成金は「取り組みの前後で複数回の手続き」が必要になるのが一般的です。書類の不備や期限切れで受給できなくなるケースも多いため、計画的な準備が欠かせません。
活用する際の注意点
最後に、助成金を活用するうえで押さえておきたい注意点をまとめます。第一に、助成金を目的化しないこと。あくまで本来必要な採用・育成を後押しする手段であり、「もらえるから採る」では本末転倒です。第二に、要件・金額・期間は毎年のように変わること。年度ごとに制度の新設・廃止・変更があるため、必ず最新情報を確認する必要があります。第三に、手続きが複雑な場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することも検討しましょう。
助成金は、採用コストを抑え、人材投資のハードルを下げる強力な味方です。採用戦略と組み合わせて、費用対効果の高い採用を実現してください。具体的な採用設計は採用戦略の立て方を、低コストの工夫は採用成功事例もあわせてご覧ください。
※助成金の要件・金額・期間は変わります。最新の公募要領をご確認ください。
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